こんにちは、もしもにスタジオ代表の防災士うめいです。
このサイトでは「防災をデザインする。」をテーマに防災に関するお役立ち情報を発信しております。
今回は「線状降水帯はなぜ増えた?」についての記事です。
「線状降水帯」はなぜ増えた?
ここ数年、ニュースで「線状降水帯(せんじょうこうすいたい)」という言葉をよく耳にするようになったのではないでしょうか?
そこで、こう思った方も多いはずです。
線状降水帯なんて、昔は聞かなかったにゃん。いつから線状降水帯って言われるようになったにゃん?
線状降水帯がなぜ増えたかというと、気象庁が2021年6月から「線状降水帯」という言葉を正式に使い始めたため、ニュースなどでよく聞くようになったのです。ただ、理由はそれだけではありません。実際に線状降水帯が増えている事実があるのです。今回は、そんな線状降水帯がなぜ増えたかについて解説していきます。
線状降水帯は本当に増えているの?データで確認
大雨の頻度は毎年増えている
さて、まずは下のグラフをご覧ください。
これは、大雨の年間発生回数のグラフです。1975年~2021年の期間の大雨の回数を記録したグラフです。
引用:気象庁(https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/kikohendo_kondankai/part6/part6_3.pdf)
グラフの赤線をみていただくとわかるのですが、右肩あがりになっているのがおわかりいただけるかと思います。
これは、『年々大雨の頻度が増えている』ということの裏付けになるのです。実際、気象庁は「1980年頃と比較して、おおむね2倍程度に(大雨の)頻度が増加している」とコメントしています。
このことからも、「最近大雨多いな」という感覚はとても正しいのです。
線状降水帯と大雨の違い
では、大雨が増えたのは確認できましたが、大雨=線状降水帯ということではありません。
大雨と線状降水帯の違いは何でしょうか?簡単な表にまとめました。
特徴 | 線状降水帯 | 大雨 |
---|---|---|
発生メカニズム | 風や地形の影響で湿った空気が同じ場所に停滞 | 低気圧、前線、台風などの気象現象により発生 |
降水のパターン | 狭い範囲に集中して長時間降り続ける | 広範囲にわたって大量の雨が降る |
特異性 | 局地的に強い雨をもたらし被害が大きい | 広域的に影響を及ぼし広範囲で被害が発生する |
ポイントとしては「風や地形の影響を受けて、局地的に発生・停滞し甚大被害を出す」ということです。
例えば、以下のように東西に延びる「線状」となって長い時間、局地的な雨を降らせます。
引用:気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/kishojoho_senjoukousuitai.html)
とくに、積乱雲の発生しやすい条件が整っている九州・西日本のエリアに発生することが多くなっています。
線状降水帯はなぜ増えたかを3つの理由
では線状降水帯という言葉をよく聞くようになったはなぜでしょうか。線状降水帯がなぜ増えたかの3つの理由をお伝えします
気候変動(地球温暖化)の影響による発生増加
そもそも、線状降水帯が増えてしまった理由のひとつに気候変動が挙げられます。
地球温暖化は線状降水帯の頻度と強度を増加させると考えられています。温暖化により大気中の水蒸気量が増加し、これが強い降雨をもたらす一因となります。また、海面温度の上昇は台風や熱帯低気圧を活発化させ、これが線状降水帯の形成を助長します。さらに、気温の上昇により大気の不安定性が増し、豪雨のリスクが高まります。
結果として、線状降水帯による集中豪雨やそれに伴う洪水や土砂災害のリスクが高まっているのです。
観測技術の進歩
線状降水帯は予想をすることが難しく、運用開始の予想精度は25%ほどだったそうです。現在も予想が難しい気象現象であることは変わりないですが、線状降水帯の予想精度は年々向上しています。
例えば、気象庁は2022年6月から「富岳」のスーパーコンピューターを活用して線状降水帯の予測情報を発表しています。これにより、予報の精度が上がりました。
さらに、2024年5月28日からは「線状降水帯」の発生をほぼ都道府県単位で予測して発信することができるようになりました。以前までは「関東甲信」など11地区だった予測単位でしたので、かなり細かい地域の単位で予想を知ることができるようになりました。
線状降水帯の予測精度の向上により
・「線状降水帯」が発生すると予測できなかったが、発生してしまった(予測失敗)
・「線状降水帯」が発生すると予想したが、実際は発生しなかった(空振り)
という確率を減らすことができます。これにより「線状降水帯」の発生を前もって知ることができるようになる確率が増えたので「線状降水帯が増えた」と感じる人も多いでしょう。
報道の増加の進歩
最後に、自然災害に対する防災意識が高まる中で、線状降水帯に関する情報提供や注意喚起が強化されています。気象庁や防災関連機関が積極的に情報を発信するようになり、その結果として一般の人々にも線状降水帯という言葉が浸透してきています。
日常会話の中で「線状降水帯」という言葉が使われるようになってきていることにより、線状降水帯というキーワードに触れる機会が多くなり最近「線状降水帯」が増えたと感じる人も多いでしょう。
まとめ
気象庁が「線状降水帯」という言葉を使い始めて、まだ数年しか経っていませんが、気象予報でよく聞くようになりました。予測できるほど観測技術が上がってきていると同時に、地球温暖化による深刻な問題でもあります。
線状降水帯は局地的に大雨をもたらし、甚大な災害をもたらすケースもあります。
ニュースなどで耳にした場合は、自分の身に危険が迫っているということを意識し、はやめの避難行動を心がけましょう。