BCPとは?中小企業の防災に効く事業継続計画の作り方を5ステップで解説

BCPとは?中小企業の防災に効く事業継続計画の作り方を5ステップで解説

BCPとは、Business Continuity Planの略で災害やトラブルが起きても事業を止めず、止まってもできるだけ早く再開するための事業継続計画のことです。

地震や感染症、サイバー攻撃など想定外の事態に備え、「何を優先し、誰がどう動くか」をあらかじめ決めておく考え方で、防災の一歩先を見据えた備えと言えます。

しかし、そもそもBCPがよくわからないという方や、BCP対策として何から始めたらよいかわからないという方も多いはず。

そこで今回はBCPという言葉を初めて聞いた方でも、図解を交えながらわかりやすく「BCP」を解説していきます。

▼記事中で図解を交えて詳しく解説!

この記事でわかること

BCPとは何か(初心者向け解説)

【図解】BCP策定の5ステップ

【図解】災害発生〜復旧までの流れ

読んだ中でもダントツBCPについてわかりやすい本でした

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目次

BCPとは何か?まずは意味を正しく知ろう

こんにちは、もしもにスタジオ代表・防災士のうめいです。
「防災をデザインする。」をテーマに防災情報や防災ノウハウを発信しています。

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防災士うめいXInstagramYoutubenote
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筆者は現在、個人で防災関連事業をしていますが、以前は8000人を超えるグループ会社のサステナビリティ責任者として、中期経営計画の策定に携わっていました。

この記事は「BCPとは何か?」を、入社1年目の自分にもわかりやすく解説する気持ちでまとめました。BCPについて知りたい方は、ぜひご覧くださいませ。

もしもにゃん

BCPとは何かを、わかりやすく解説するにゃん~♪

BCPとはBusiness Continuity Plan(ビジネス コンティニュー プラン)の略で、日本語では「事業継続計画」と訳されます。

とても難しい用語のように聞こえますが、かみ砕いて表現すると災害やトラブルが起きても、事業を止めないための計画。あるいは、止まっても“できるだけ早く立て直す”ための準備です。

BCPの定義

公的機関ではBCPをどのように定義しているのでしょうか。
個人的には「中小企業庁」の定義がわかりやすいです。BCPの定義に興味がある方はご覧ください。
※BCPの定義は折りたたんでいます。タップかクリックで詳細をご覧ください。

▼ 中小企業庁の定義

中小企業庁のページを確認すると、以下のように定義づけされています。

企業が自然災害、大火災、テロ攻撃等の緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき行動や緊急時における事業継続のための方法、手段等を取り決めておく計画のこと。

引用:中小企業BCP策定運用指針
▼ 内閣府の定義

内閣府のページを確認すると、以下のように定義づけされています。

災害時に特定された重要業務が中断しないこと、また万一事業活動が中断した場合に目標復旧時間内に重要な機能を再開させ、業務中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下などから企業を守るための経営戦略。バックアップシステムの整備、バックアップオフィスの確保、安否確認の迅速化、要員の確保、生産設備の代替などの対策を実施する(Business Continuity Plan: BCP)。ここでいう計画とは、単なる計画書の意味ではなく、マネジメント全般を含むニュアンスで用いられている。マネジメントを強調する場合は、BCM(Business Continuity Management)とする場合もある。

引用:内閣府 防災情報のページ

BCPが必要とされる理由

ところで、なぜBCPが必要とされるのでしょうか。
特に中小企業にとって、いつ発生するかわからない緊急事態に、そこまでの時間とコストを投資する必要はあるのでしょうか。

上記を考えるために、まずは会社にとってどのようなことが「緊急事態」にあたるか、リスト化して整理してみましょう。

緊急事態リスト

企業が事業を通常通りに継続できなくなる緊急事態には、以下のようなリスクが考えられます。

想定すべきリスク例:
自然災害・事故・インフラ障害・サイバーリスク・感染症・人的リスク・戦争・サプライチェーンリスク・風評リスク・財務リスク

BCP対策というと、自然災害対策が真っ先に思い浮かびますが、実は事業継続が困難になるリスクは上記のように多岐にわたります。

近年発生した「緊急事態」の事例

BCPが必要になるイメージを膨らませるために、近年発生した「緊急事態」を振り返ってみましょう。
※詳細事例は折りたたんでいます。タップかクリックで詳細をご覧ください。

▼ 2020年:新型コロナウイルス

2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、社会全体が大きな影響を受けました。
対面での業務や移動が制限され、売上の急減、休業、倒産に追い込まれた企業も少なくありません。

感染症は自然災害と違い、終わりが見えず、長期間にわたって事業活動を制限するという特徴があります。
この出来事は、「人が集まれない」「出社できない」という事態を想定したBCPの重要性を、多くの企業に突きつけました。

この事例のBCPポイント:出社できない前提の業務設計(代替要員・リモート環境)

2024年:能登半島地震

2024年1月、能登半島地震が発生し、広い範囲で建物被害やインフラ障害が起きました。
道路の寸断や長期の断水・停電により、事業の再開そのものが困難になるケースも見られました。

この地震では、「被災しなかった地域の企業であっても、取引先の被災によって事業が止まる」という現実が浮き彫りになりました。
サプライチェーンを含めたBCPの必要性を、改めて認識させる出来事だったと言えます。

この事例のBCPポイント:サプライチェーン断への備え(代替調達・代替物流)

2025年:トランプ関税に象徴される通商リスク

2025年は、米国の通商政策、とりわけトランプ関税に代表される保護主義的な動きが企業に対しての大きなリスクとなりました。関税の引き上げや貿易条件の変更は、企業の意思とは無関係に、原材料価格や調達ルート、収益構造に大きな影響を与えます。

こうした通商リスクの特徴は、予告なく、しかも短期間で事業環境が変わる点にあります。
災害のように目に見える被害がなくても、輸入コストの上昇や取引停止によって、事業が立ち行かなくなるケースも現実に起こります。

この事例のBCPポイント:調達・価格変動への耐性(複線化・契約条件の見直し)
参考:みずほリサーチ&テクノロジーズ「トランプ関税による企業への影響と今後の企業戦略策定について」

2025年:サイバー攻撃による大規模なインフラ停止

2025年には、サイバー攻撃によって企業の出荷や業務が実際に停止する事例が相次ぎました。
アサヒビールでは、ITシステムへの攻撃の影響で一部商品の出荷が停止し、物理的な被害がなくても事業が止まる現実が明らかになりました。
また、過去にアスクルでもサイバー攻撃により受注・出荷業務が長期間停止し、売上や顧客対応に深刻な影響が出ました。
これらの事例は、サイバーリスクが情報漏えいにとどまらず、事業継続そのものを脅かす脅威であることを示しています。

この事例のBCPポイント:IT停止=出荷停止(バックアップと復旧手順)

参考:日本経済新聞「アサヒを教訓にサイバー攻撃に備えを」

こういった近年の事例を見ても、BCPが自然災害だけでなく、多様な「緊急事態」を想定する必要があることを、あらためて示しています。

緊急事態で事業が止まらないように

緊急事態で事業が止まってしまうと、最悪の場合は従業員に給与が支払えなかったり、倒産することになります。

大企業の場合、上記のような「緊急事態」に遭遇しても代替拠点や代替人員を確保しており、構造的にすぐに倒産するような事態にはなりにくいです。

一方で、特に中小企業や個人事業では、「数週間の事業停止」が致命傷になることも珍しくありません。なぜなら、小さな事業ほど「代わりがきかない」部分が多いからです。

例えば、担当者が1人休むだけで、製品の出荷や提供サービスが止まってしまうようなケースがあります。だからこそ、中小企業こそBCP策定を行って緊急事態に備える必要があるのです。

BCP策定のステップ

では、どのようにBCPを策定していけばよいのでしょうか。
もしBCP策定自体を外部のコンサルティングなどに依頼する場合でも、担当者が基本的な流れを押さえておくと、迷わず進められます。

BCP策定は以下の5ステップで考えてみましょう。

STEP1|守るべきものを決める

BCP策定の第一歩は、「何を守るための計画なのか」を明確にすることです。

災害時は、人手や時間、設備などのリソースが限られるため、すべてを同時に守ることはできません。そこでまず、人命・事業・顧客からの信頼など、事業にとって何が最優先なのかを整理し、守るべきものを明確にします。

経営理念や事業の役割を振り返りながら、「これだけは失ってはいけないもの」を言語化することが、BCP策定全体の判断軸になります。

STEP1では「非常時に何を最優先で守るのか(人命・重要業務・顧客からの信頼など)」を言語化できていればOKです。

※内閣府防災担当の事業継続ガイドライン:『方針の策定』にあたる内容です。

STEP2|止まったら困る仕事を洗い出す

次に行うのは、災害時でも継続すべき重要な業務の洗い出しです。

ここでのポイントは「すべての業務」を対象にしないこと。止まっても影響が小さい業務と、止まると事業継続が困難になる業務を区別します。
売上に直結する業務や、法的・社会的責任が伴う業務などを中心に整理することで、緊急時に優先すべき行動が明確になります。
専門用語ではBIA(ビジネスインパクト分析)と言うことがあります。これは業務やシステムが止まった場合の事業への影響度を評価するための分析です。

STEP2では事業が止まったときに影響が大きい業務と、後回しにできる業務を区別し「止まると致命的な仕事」をリスト化して整理できていればOKです。

※内閣府防災担当の事業継続ガイドライン:『分析・検討』にあたる内容です。

STEP3|起きうる非常事態を想定する

重要業務が整理できたら、それらを脅かす非常事態を想定します。

地震や台風などの自然災害だけでなく、感染症の流行、サイバー攻撃、取引先の倒産や物流停止など、自社の業務が止まる可能性のある事態を幅広く考えます。(前述の「緊急事態リスト」を参考にしてください)

すべてを完璧に予測する必要はありませんが、「何が起きたら業務が止まるか」という視点で整理することで、現実的で使えるBCPにつながります。

STEP3では自然災害だけでなく、感染症やサイバー攻撃、取引先トラブルなど、自社の業務が止まる原因を現実的に想定し、リスト化できればOKです。

※内閣府防災担当の事業継続ガイドライン:『事業継続戦略・対策の検討と決定』にあたる内容です。

STEP4|「非常時にどう動くか」を決める

非常事態が起きたときに、誰が・どのように動くのかを具体的に決めます。
判断する人、指示を出す人、実際に動く人を明確にし、初動対応や業務再開の順序を整理します。
「誰に連絡するのか」「どこに集まるのか」「何から再開するのか」といった行動レベルまで落とし込むことが重要です。文章だけでなく、簡単なフローや役割分担表にしておくと、緊急時でも迷いにくくなります。

また、非常時は通常の運用と異なるため「経営層やマネジメントと連絡がつかない時の指揮系統体制」など、踏み込んだ内容にしておくと、実効性のあるものとなります。

STEP4ではSTEP1~3までをまとめながら、実際に行動に移す場合の体制・流れを整理してドキュメント化できているとOKです。

※内閣府防災担当の事業継続ガイドライン:『計画の策定』にあたる内容です。

STEP5|実際に使えるかを確認・更新する

BCPは作って終わりではありません。
策定した内容が本当に使えるかを、訓練やシミュレーションを通じて確認します。実際に試してみることで、連絡が取れない、判断が遅れるなどの課題が見えてきます。

また、事業内容や人員体制、社会環境は常に変化します。定期的に見直し、必要に応じて更新することで、BCPは「机上の計画」ではなく、いざという時に実際に機能する仕組みになります。

STEP5では、BCP担当者だけでなく、従業員を巻き込みながら、想定したBCP計画が本当に機能するかを確認できればOKです。さらに、確認や訓練の結果から、最新の状況に合わせて定期的に見直す仕組みを構築しましょう。

※内閣府防災担当の事業継続ガイドライン:『事前対策及び教育・訓練の実施』及び『見直し・改善』にあたる内容です。

災害発生時の復旧までの流れ

BCPを策定した場合、どのようにBCPを生かして災害復旧をめざすのでしょうか。
ここからは災害発生から復旧までの大まかな流れを確認していきましょう。

被害状況の確認

災害発生直後に最優先で行うべきなのは、自社がどのような被害を受けているかを把握することです。
まず確認したいのは、従業員の安否です。全員の無事を確認できなければ、その後の対応は進められません。緊急連絡網に加え、安否確認を自動で行える仕組みを整えておくと、迅速な情報収集につながります。

次に、BCPで整理している中核事業について、設備・システム・取引先などにどの程度の影響が出ているかを、重要度の高い順に確認します。
逆に言うと、中核事業についての重要度が整理ができていないと、緊急時に「何から確認していか」わからず初動対応が遅れてしまいます。
災害発生の初期では情報が混乱しやすいため、情報の集約・管理を担う担当者を決め、正確な状況共有ができる体制を整えることが重要です。

代替手段による応急処置

被害の全体像が見えてきたら、事業を完全に止めないための応急対応に移ります。
たとえば、非常用電源への切り替えや、システムをバックアップ環境で稼働させるといった対応が考えられます。また、出社できない社員がいる場合は、別の担当者に業務を引き継ぐなど、中核事業を最低限継続する体制を構築します。
さらに、設備や人員、資金、情報などの経営資源が使えなくなった場合に備え、代替手段を事前に用意しておくことで、復旧までの時間を短縮できます。こうした準備が、被害の拡大を防ぐ鍵となります。

平常操業に戻すための復旧作業

状況が落ち着いてきた段階では、平常時の事業運営に戻すための復旧作業を進めます。本格的な復旧には、建物や設備といったハード面だけでなく、人員配置やデータ管理などのソフト面の対応も欠かせません。

円滑な復旧を実現するには、日頃から設備やシステムの構成、運用状況を把握しておくことが重要です。
その情報をもとに、元の状態へ戻すために必要な作業や資源を整理し、優先順位をつけて投入することで、無理のない復旧計画を実行できます。

BCPは一度作って終わりではない

実はここが、いちばん大切なポイントです。
時が経てば、人も、仕事も、環境も変わります

例えば、2005年は日本におけるBCP推進の重要な転換点であり、内閣府によって「事業継続ガイドライン」が初めて公表され、企業や組織によるBCP策定の取り組みが強く推奨されるようになった年です。

2005年ごろにBCP計画を策定したものの、20年間内容は見直されていないという場合、東日本大震災や新型コロナウイルスの反省が生かされていないBCP計画になってしまっています。
また、近年では生成AIなどの新しい技術の進歩も早く、気づかないうちに新たな脅威が出現している可能性があります。

時代に合わせた最新の情報を反映させながら、BCPもそれに合わせて更新できるのが望ましいです。
書類を作って終わらせず、実行性のある計画に落とし込み、PDCAを回すことが推奨されます。

コラム:個人や家庭にも使えるBCPの考え方

最後に、家族の安心に関する、大切なことをひとつだけ。

実は、BCPの考え方は家族や個人の暮らしにも、そのまま応用できます。
※一部ではこれをFCP(Family Continuity Plan)として表現していることもありますが、FCPは一般的な言葉ではありません。

例えば、災害時に家族で共有しておきたいことなどを整理するのは、BCPの考え方に近いと言えます。
当サイトを運営する「もしもにスタジオ」では、家族が離れても再会できる「おまもりノート」を無料で配布しているので、ぜひご活用ください。

企業内やイベントで配布いただくことも可能です。

企業の方も、従業員の方への配布◎

BCP対策の一環として、上記のおまもりノートを従業員の方に配布いただいてもOKです。
企業ロゴを掲載した専用デザインにして配布することも可能ですので、ご興味あればお問い合わせください。

BCPを家族や個人視点で応用すると、「仕事が一時的に止まったら?」「もし食料が買えなくなったら?」という緊急事態に備えて準備をしておくこともできます。ぜひ、BCPを実施される際には家庭の計画も立てられることをおすすめします。

BCPを難しく考えず、まずはやってみる

BCPと聞くと高額をコンサルに支払って作ってもらうもの、というイメージがあるかもしれません。
しかし、ひとつずつかみ砕いていけば、想像よりも簡単で、理解すれば社内でもBCPの構築ができます。

2024年4月には介護サービスの事業所でBCPの策定と実行が義務化され、今後ますますBCPの重要性が高まってくると考えられます。
BCPの策定ができていない事業者の方は、まずはコストをかけず一度社内でカタチにしてみるのもよいかもしれません。

防災士うめい

今回は以上です。最後までお読み頂きありがとうございました!
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