こんにちは、もしもにスタジオ代表の防災士うめいです。
このサイトでは「防災をデザインする。」をテーマに防災に関するお役立ち情報を発信しております。
今回は「保育園・幼稚園の避難訓練で大事なこと」についての記事です。
避難訓練の計画にあたって、大事なことを知りたい
参加者に自発的・積極的に避難訓練に参加して欲しい
避難訓練の効果や事例について知りたい
避難訓練は命を守る大事な行事
この記事を読んでいる方は、避難訓練を計画されている管理者の方や、担当者の方が多いと思います。
わたしは2児の子育てをしている防災士です。防災士会メンバーの活動として、子供たちに防災の重要さを伝える取り組みを行っています。
避難訓練のポイント理解した上で避難訓練を実施することで、対象者が積極的に、前向きな気持ちで取り組んでくれるようになります。規定通りの形だけの開催や、運営の自己満足にならないように、しっかりと避難訓練に大切なことを理解した上で計画・実施をしましょう。
避難訓練が命を守った例:釜石の奇跡
避難訓練の大事なことを解説する前に、避難訓練の実例をご紹介します。
「釜石の奇跡」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。2011年東日本大震災の際、大津波が迫りくるなか訓練通りに避難を実施し、釜石東中学校・鵜住居(うのすまい)小学校の教員・生徒約570名が高台に移動し無事だった話です。
これは「釜石の奇跡」と呼ばれてメディアにも多く取り上げられましたが、一方で「奇跡と呼ぶより、真剣な防災教育の賜物だ」という意見もあります。
釜石東中学校の避難訓練は、命を守るために真剣そのものでした。真剣さがわかるエピソードを一つご紹介します。避難訓練の際、他の生徒には秘密で生徒のひとりを保健室に待機させておきます。すると、いざ避難開始となった際に「〇〇さんがいない!」と気づきます。教員はそこからどう行動するかを見て、みんなで反省点を振り返り次に活かすということを繰り返していたそうです。
この訓練の賜物があってこそ、大津波の襲来から命を守り多くの命を救うことができました。
保育園・幼稚園の避難訓練で大切なこと
ここから先は、保育園・幼稚園の避難訓練で大切なことをご紹介します。
まずは先生や管理者の心構えや意識から
保育園や幼稚園の避難訓練で、最も大切なことは「実際の災害時に安全に避難できるようにすること」です。そのためには、先生や管理者が積極的に避難訓練に参加することが大切です。
保育園での避難訓練は月に1回実施することが、消防法で義務付けられています。しかし、「義務だから」といって形式上の実施になってしまうと本末転倒です。「実際の災害時に安全に避難できるようにすること」の目的達成のため、工夫をしながら有意義な避難訓練を実施しましょう。
新米先生~ベテラン先生から、パートスタッフなども巻き込んで、園全体が積極的に参加したい!と思わせる工夫が必要です。例えば、外部講師に講演を依頼して園全体の防災意識を高めることや、訓練後の振り返り会の実施なども有効でしょう。
児童における避難訓練で大切なこと
0歳~6歳まで幅広い年齢の乳幼児が在籍する園では、年齢に合わせた訓練内容が大切です。児童には繰り返し丁寧に緊急時の対応方法や避難方法を伝えることで、理解することができます。恐怖心を煽って災害の怖さを伝えることよりも「子供たちには冷静に伝え、時には楽しく参加して避難行動のすり込みを行う」ことが重要です。
有名なのは「ダンゴムシのポーズ」などがあります。身近にいるダンゴムシの真似という遊び要素も取り入れながら、緊急時にとっさに取る行動として大変有用です。詳しくは関連リンクをご覧ください。
児童への防災教育は、絵本を使って
避難訓練などのイベント型の訓練も重要ですが、読み聞かせなどに防災の要素を取り入れて、普段から災害について考える機会を創出することも有用です。子どもたちの意識が高まると、避難訓練のレベルもそり一層高まります。
ここでは、防災教育に有効な絵本をご紹介します。
ぐらぐらゆれたら だんごむし!
ぐらぐらゆれたら だんごむし!は、日本で有名な危機感アドバイザー、国崎信江さんが監修している防災教育の本です
ぷーたのぼうさい
島に住むくまのぷーたの一日を通じて、備えの大切さと自分の守り方などが学べる絵本です。子どもでも理解できるような図解で防災グッズリストも掲載されており、園児たちの防災に対する理解をより深めることができます。
はなちゃんの はやあるき はやあるき
「はなちゃんの はやあるき はやあるき」は東日本大震災で実際にあった津波からの避難を教訓に作成された絵本です。野田村保育所の園児90名と職員14名は大津波から避難して全員無事でした。その裏には毎月の避難訓練があったと言います。実話をもとに作成された絵本は避難訓練の大切さを教えてくれます。
保護者への伝え方も大切
せっかく避難行動を定期実施しても、なかなか保護者には知ってもらう機会が少ないです。保育園・幼稚園のおたよりにしっかり活動報告を記載したり、保護者のお迎え時に避難訓練実施報告をすることも有用です。
また、園内の備蓄品一覧をポスターにして貼りだしたり、お散歩マップにハザード情報(危険場所の情報)を書き込んで貼りだすことで、保護者にも防災意識の共有を行うことができます。
「引き取り訓練」も大変な重要な避難訓練となります。実際に災害が起こった場合は、園児の安全確保と同時に、保護者への引き渡しがセットとなります。一方で、園児や職員の安全確保は問題なかったが、その後の引き渡しや連絡方法には自信がないという方も多いのではないでしょうか。引き渡しの想定までを想定した訓練を計画に入れると良いです。
保護者参加型の引き取り訓練の場合、トラブルになるケースも見受けられます。特に、企業勤めの方の早退や有休などが前提となる時間帯で「参加必須(強制参加)」の引き取り訓練などを計画する際は要注意です。
保護者に配布する入園ガイドにしっかりと引き取り訓練の条項を盛り込んだり、開催の数日前からしっかりアナウンスするなどして、保護者の方としっかりコミュニケーションをとって実施をするようにしましょう。
保育園・幼稚園の避難訓練で大事なことまとめ
保育園や幼稚園は「義務だから」と言って意識低いまま避難訓練を実施してしまうと、いざ災害が来た時に対応できず、最悪の場合は命に関わります。
一方で、幼い子供たちに災害をどう伝えるか、保護者をどう巻き込んで防災計画を立てるのかなど、常に課題もあります。しっかり計画に落とし仕込んで周知徹底することで、関係者の理解を得ながらしっかり命を守るための避難訓練を実施していきましょう。